食品マーケティング&食品商品開発
コンサルティング
小川マーケティング事務所

食品マーケティングのヒント???


ヘビーユーザーを大切に


ある企業から定番商品のリニューアルの相談を受けました。
主力商品の売上を高めたいので味を改良してリニューアルしたいという内容です。

おいしくすれば売り上げが上がる、ここに大きな誤りがあります。
「おいしい」「おいしくない」はメーカーが決めることではなく消費者が決めることです。
皆さんは今から約30年前のコカ・コーラのリニューアルの大失敗を覚えていらっしゃいますか?

時は1985年、アメリカでの話です。
競合するペプシ・コーラが若者を中心に売り上げを伸ばしてきているためにコカ・コーラはそれまでのコカ・コーラの味を変えるという決断をしました。
よりおいしいコーラをつくり出すためにブラインドテスト(商品名がわからないようにしてモニターに味の評価をしてもらうこと)を繰り返し行い、それまでの自社商品、競合商品と比べて大きな評価があった新商品「ニューコーク(NewCoke)」を発売したのです。
普通は誰が考えても「ニューコーク」が売れると思いますよね。ところが全く売れずに不買運動までに発展してしまったのです。
結局、「ニューコーク」の新発売の三か月後にコカ・コーラ社は「コカ・コーラクラシック」として従来の味わいの商品に戻したのです。

何故、多くのモニターがおいしいと思ったのに売れなかったのでしょう。
当時、売れなかった理由は記事には見受けられませんでしたが二つの理由が考えられます。一つは「モニター選定の誤り」もう一つは「味への慣れを考慮しなかったこと」。
コーラの飲用者はヘビーユーザー(仮に1日1本)とライトユーザー(仮に1週間に1本)二つの層に分かれます。
ヘビーユーザーとライトユーザーの人口比率、消費量比率はわかりませんが、仮に二つのユーザー層の人口比率が2:8とした場合、ヘビーユーザー全体の消費量はライトユーザー全体の消費量より圧倒的に多いはずと想像できます。モニター1,000人の調査でヘビーユーザー200人、ライトユーザー800人としたら調査結果はライトユーザーの嗜好に左右されてしまいます。
「ニューコーク」はライトユーザーにとってはおいしいコーラだったのでしょうが、ヘビーユーザーにとってはこれまでの飲みなれたコーラと違い、違和感のある味だったために評価しなかったのでしょう。
ライトユーザー800人全員が1週間に1本買ってくれても1週間で800本、毎日飲むヘビーユーザーの消費量は1週間で1,400本、ヘビーユーザーが買わなくなったら販売量は激減になるのは当然です。

ヘビーユーザーとライトユーザーの比率を見つけるのは難しいのですが、最近ではクレジット利用の増加とPOPの機能の向上で個人単位は無理でも家庭単位での把握はしやすくなっています。